本論文では、金融政策ショックに対する消費の異質的反応について、「日本家計パネル調査（JHPS/KHPS）」を用いて検証した。本論文のリサーチクエスチョンは、「外生的な（事前には予想されなかった）利子率の変化に対して、家計消費の反応は家計間で同質的なのか？」である。この問いに答えるため、本論文ではまず、経済の外生的な変化として、金融政策の外生的な変化（金融政策ショック）を識別した。そのうえで、識別された金融政策ショックに対して家計消費がどのように反応したのかを分析した。本論文の発見は、金融政策ショックは家計消費に異質的な反応を引き起こしていた点である。第一に、負債を抱える家計は、金利が上昇するような金融政策ショックが生じると足もとの消費を有意に減少させていた。この発見は、金利を引き上げる（下げる）ことで足もとの消費を抑制（刺激）することを狙った金融政策、つまり異時点間の消費の代替効果を狙った金融政策が奏功していることが示唆された。第二に、金融資産を多く保有する家計にとって、金利が上昇するような金融政策ショックは消費を有意に増加させていた。この発見は、金利が上昇すると消費をむしろ増やす家計が存在する、つまり所得効果が代替効果より優勢となる家計が存在することを示唆している。本研究の結果は、マクロ経済政策としての金融政策が家計間に異質的な影響を与えている可能性を示唆するものである。