調査の目的と経緯
民主主義国家における望ましい制度・政策の設計には、信頼に足るデータとそれを用いた政策評価の枠組みが不可欠です。パネル調査は、同一の個人を継続的に追跡することで、経済主体の動学的な行動の分析や観察できない異質性を考慮した分析を可能にするという点で、今日の社会科学における研究・政策評価に不可欠なものとなりつつあります。しかしながら、わが国においては米国のPanel Study of Income Dynamics (PSID) や欧州の European Community Household Panel (ECHP) に代表されるような、特定の層に焦点を当てるのではなく、社会全体の人口構成を反映した家計パネル調査はまったく存在してきませんでした。
「慶應義塾家計パネル調査」(KHPS)は、このような要請に応えるために、全国約4,000世帯、7,000人を対象に2004年から継続して実施されてきた調査です。(標本の脱落を補うため、2007年に新たに約1,400人、2012年には約1,000人を対象に加えました) 。就業行動や貧困動態、実物資産の世帯間移転の実態など、多岐にわたる分析トピックを網羅した、質、量ともにわが国では類を見ない先駆的なものであると評価されています。
本センターでは、KHPS による調査実績を活かし、2009 年より新たに全国 4,000 人の男女を対象とした「日本家計パネル調査」(JHPS)Japan Household Panel Surveyを同時並行的に実施しています。JHPS では、経済状況や就業状況のほかに、教育や健康・医療などに焦点を当てて調査を実施してきました。

2014年に、これまで別個の調査として実施・管理してきた(旧)「日本家計パネル調査(JHPS)」と(旧)「慶應義塾家計パネル調査(KHPS)」を統合し、「日本家計パネル調査 (JHPS/KHPS)」と名称を変更しました。
データの構造とサンプル等の特性は以下の通りです。なお、以下では、(旧)「日本家計パネル調査(JHPS)」を「JHPSデータ」、(旧)「慶應義塾家計パネル調査(KHPS)」を「KHPSデータ」と略します。

調査対象と方法
KHPSは2004年から、JHPSは2009年から実施しています。KHPSは、2007年、2012年に新規コホートを追加しました。当初予定したサンプルサイズは、KHPS2004は4,000、KHPS2007は1,400、KHPS2012は1,000、JHPS2009は4000です。
KHPSは20歳~69歳の男女、JHPSは20歳以上の男女を対象としています。サンプル抽出の母集団は重なっていますが、結果的に、調査回答者はKHPSとJHPSで重複はありません。
KHPSとJHPSの調査対象者は層化 2 段無作為抽出法により選定しています。
抽出の第 1 段階では、全国を地方・都市階級により 24 層に層化し、各層に住民基本台帳人口の人口割合に合わせ標本数を配分し、そのうえで、1 つの調査地域あたりの標本数を 10 程度(KHPS2007、KHPS2012 では 5程度)として各層の調査地域数を決定し、所定数の調査区を無作為抽出しました。調査地域は、抽出単位として国勢調査の調査区を使用しています。
第 2 段階では選定された調査地域の住民基本台帳を抽出台帳として、調査対象適格者を対象に、指定された起番号、抽出間隔に基づき1調査地域について約 10 人(KHPS2007、KHPS2012 では 5 人)を抽出しています。
ただし、正規に選定された調査対象者が転居したり、長期不在、住所不明等で会えなかったり、調査を受けてもらえなかった場合、あらかじめ選定しておいた予備対象を代替として調査することにより、予定した標本サイズを確保しています。予備対象は、正規の対象者と同じ調査区内に居住し、同じ性別(男、女)と年齢区分(20 歳代、30 歳代、40 歳代、50 歳代、60 歳以上)から無作為抽出しています。このため、正規対象者であっても予備対象者であっても、性別・年齢区分でみた抽出率にバイアスは生じません。
調査の対象者が有配偶の場合、その配偶者に対しても同一の調査項目が用意されています。
調査項目
JHPSは主に就業、所得、教育、健康・医療などをテーマに調査し、KHPSは主に就業、消費、所得、住宅などをテーマに調査してきましたが、2014年以降は調査項目を統一しています。
現在の質問票は、家族構成、個人属性、学歴、就業・就学状態、生活時間の配分、親との居住関係など包括的なトピックをカバーしています。
調査票の閲覧
KHPS年度 | KHPS調査票 | JHPS年度 | JHPS調査票 |
---|---|---|---|
第1年度 | KHPS2004 | - | - |
第2年度 | KHPS2005 | - | - |
第3年度 | KHPS2006 | - | - |
第4年度 | KHPS2007 | - | - |
第5年度 | KHPS2008 | - | - |
第6年度 | KHPS2009 | 第1年度 | JHPS2009 |
第7年度 | KHPS2010 | 第2年度 | JHPS2010 |
第8年度 | KHPS2011 | 第3年度 | JHPS2011 |
第9年度 | KHPS2012 | 第4年度 | JHPS2012 |
第10年度 | KHPS2013 | 第5年度 | JHPS2013 |
第11年度 | KHPS2014 | 第6年度 | JHPS2014 |
第12年度 | KHPS2015 | 第7年度 | JHPS2015 |
第13年度 | KHPS2016 | 第8年度 | JHPS2016 |
第14年度 | KHPS2017 | 第9年度 | JHPS2017 |
第15年度 | KHPS2018 | 第10年度 | JHPS2018 |
第16年度 | KHPS2019 | 第11年度 | JHPS2019 |
第17年度 | KHPS2020 | 第12年度 | JHPS2020 |
第18年度 | KHPS2021 | 第13年度 | JHPS2021 |
第19年度 | KHPS2022 | 第14年度 | JHPS2022 |
データの修正と更新について
修正日 | 2018年 1月30日 |
修正変数 | JHPS2010 変数番号1415(有配偶票p.42問4.) |
変数内容 | ご主人と奥様以外そのほか全員の合計(その他の収入) |
修正前 | 有効回答者数1,656人、平均値:0、標準偏差:0 |
修正後 | 有効回答者数1,716人、平均値:1.485、標準偏差:18.870 |