ディスカッションペーパー

【第7回学生論文コンテストJHPS AWARD受賞論文:最優秀賞】
子育て世帯への現金給付の効果:世帯特性による効果の異質性に関する検証

DP番号 DP2025-006
言語 日本語のみ
発行年月 March, 2026
著者 柴垣創至
JELコード H31; I38
キーワード 子ども手当; 現金給付政策; 教育投資; 育児; 主観的厚生; 家計行動; 効果の異質性; 連続処置DID
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要旨

本研究は、2010年導入の子ども手当を自然実験として利用し、現金給付が家計行動や主観的厚生に与える影響を検証した。給付増加幅に基づく連続処置DIDを採用し、世帯属性別の異質性を体系的に分析した。分析の結果、支出行動の分化が確認された。共働き・低所得世帯では教育支出に、未就学児・片働き世帯では娯楽支出に正の効果が確認された。さらに、低所得層と他の所得階層との間で効果の規模差を検証するDDD分析では、低所得層における教育支出の増加幅が相対的に大きく、資金制約緩和により教育投資が促進された可能性が示唆された。時間配分の観点では、配偶者の育児時間に全体的な正の効果が確認された一方、主観的厚生への影響は非対称的であり、有意な効果は限定的であった。幸福度の改善は一部にとどまり、将来安心感については一部で低下傾向が確認された。以上の結果は、現金給付が教育投資を促進しうる一方で、親の主観的厚生の改善には直結しない可能性を示している。真に子育て世帯の厚生を高めるには、現金給付のみならず、家計が直面する時間的・心理的制約にまで配慮した補完的施策が重要であることが示唆される。