ディスカッションペーパー

【第7回学生論文コンテストJHPS AWARD受賞論文:優秀賞】
時間外労働の上限規制施行が長時間労働を是とする職場環境と個人の働き方に与える影響分析

DP番号 DP2025-007
言語 日本語のみ
発行年月 March, 2026
著者 内藤隆聡
JELコード J22; J81
キーワード 時間外労働の上限規制; 働き方改革; DID分析; 職場環境; 管理監督者; 労働密度; 無給残業; 負の外部性; メンタルヘルス
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要旨

本研究では、2019年(中小企業は2020年)に適用された「罰則付きの時間外労働の上限規制」が、長時間労働の是正と職場環境や労働密度に与えた影響を、『日本家計パネル調査(JHPS/KHPS)』を利用して検証した。企業規模別の異質性を考慮したDiD分析の結果、大企業・中小企業を問わず有給残業時間の有意な削減が確認された。当初懸念されていた無給残業への転嫁や労働密度の増加といった負の外部性は確認されず、むしろ中小企業においては労働密度の有意な低下という働き方の質的改善が見られた。また、規制対象外である管理監督者層への業務転嫁(しわ寄せ)は立証されず、大企業・中小企業ともに管理監督者の労働時間も削減されるという波及効果が明らかになった。職場環境については、中小企業で長時間労働を是とする職場規範が有意に改善したほか、特定の環境下で労働時間の増加が生活満足度に与える負の影響を緩和する交互作用も確認された。以上より、本政策は長時間労働の是正という目的を達成しただけでなく、特に中小企業において組織全体の行動様式や働き方の質に正の影響を及ぼしたことが示唆された。