ディスカッションペーパー

身長と体重が賃金に及ぼす影響

DP番号 DP-2009-010
言語 日本語のみ
発行年月 March, 2010
著者 田中 賢久
JELコード J15, J24, J71
キーワード 身長、体重、賃金、差別
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要旨

我が国では外見が労働条件に与える影響に関する分析がまだ多くない。本稿では、「日
本家計パネル調査(JHPS)」<2009 年調査>を用いて、外見として体型、とりわけ身長と体
重が賃金に与える影響に関する分析を行った。具体的には、多項ロジット・セレクション・
モデルを用い、サンプルセレクションを考慮に入れた上で、男女別の賃金関数を推定した。
さらに、職業ダミーと外見の交差項、消費者との接触ダミーと外見の交差項をその賃金関
数に含めることによって、外見の効果が職業特有の効果(生産性の効果)か、雇用主によ
る差別の効果か、あるいは消費者による差別の効果かどうかを識別し、我が国においてそ
うした効果が存在するのかどうかについての検証を行った。賃金関数の推定の際、サンプ
ルセレクションを考慮にいれた上で、3つの差別に関する識別を行ったことが先行研究と
の大きな違いである。
本稿で得られた結果は以下のとおりである。まず正規雇用の男性において、高身長プレ
ミアムと低身長ペナルティが見られたことである。しかし、その効果は女性には見られな
かった。次にそうした外見の効果の要因として、雇用主による差別が示唆された。体重に
関しては、男性では肥満ペナルティは確認できなかった。女性では賃金と正の相関をもつ
傾向にあり、それが観察されない変数による影響であることが示唆された。消費者による
差別は男女ともに確認されなかった。