男性の経済力と配偶者選好にみる未婚・晩婚の要因
DP番号
DP-2009-012
言語
日本語のみ
発行年月
March, 2010
著者
李 青雅
JELコード
キーワード
ダウンロード
PDF
要旨
本稿は,学校を卒業してすぐに定職につかず,不安定雇用となった男性のその後の結婚
行動に焦点をあてながら,未婚・晩婚の要因を分析している。不安定雇用の男性は潜在的
夫としての評価が低いことから,結婚のオファーを受ける確率が低く,未婚・晩婚になり
やすい。
しかし,理想の相手にこだわらず配偶者に対する留保水準を下方に修正すると,未婚・晩
婚にならないことも考えられる。本稿では,潜在的妻に対する留保水準の下方修正は時間
選好率によって異なる,という仮説を立て,『慶應義塾家計パネル調査』のデータを用い
たサバイバル分析によりその妥当性を検証した。その結果,以下の結論が得られた。
時間選好率の低い高学歴男性は,安易に留保水準の下方修正を行わず理想の相手を待ち
続けることから,未婚・晩婚の確率が高い。一方,時間選好率の高い低学歴男性の場合,
オファーを受ける確率の低下が結婚イベントの発生に与えるマイナスの影響は留保水準の
下方修正により部分的に相殺された結果,必ずしも未婚・晩婚にならないことが明らかに
なった。
人口密集地域での居住は理想にこだわらない男性の選択を促す方向にある。本稿では,不
安定雇用からの脱出が結婚に与える影響をもみている。その結果,不安定雇用からの脱出
は高学歴男性の結婚を早めているが,低学歴男性についてはその影響は確認されていない。