ディスカッションペーパー

Web 調査モードの追加は回収率を上昇させるのか:統制群がない場合に選択肢追加の効果を評価する

DP番号 DP-2010-002
言語 日本語のみ
発行年月 March, 2011
著者 山本 耕資・直井 道生
JELコード
キーワード
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要旨

日本家計パネル調査(JHPS)の第 1 回調査は、対象者が希望する場合に、留置調
査部分について紙ではなく Web で回答できるように設計された。本稿では、
この追加モードとしての Web 調査が回収状況にどのように影響したのかを検
討する。この際、Web 調査での回答者のすべてが、Web 調査モードがない場
合には回答しなかったとは限らない、という点が重要である。一般に、政策な
どの処置(treatment)の効果を計測する際、通常は統制群が必要となる。これは
実験デザインでも準実験デザインでも同様である。しかしながら、現実には統
制群を設定できない場合もある。本稿は、統制群がなくても、選択肢追加型の
処置の効果を、一定の仮定のもとで推定できることを示し、その方法を、Web
モード追加による回収率の上昇分の推定に応用する。その結果、「Web 回答」
と「紙回答」は相互に代替しやすく、「Web 調査がなければ回収はできなかっ
た」という対象者はほとんどいなかったと推測され、Web 調査を準備したこと
による回収率の純粋な上昇幅は限定的であったと考えられる。付随的に、回収
されたサンプルのデータから、Web 調査での回答を可能にする PC・インター
ネットの環境をどのような対象者が有し、また、回答可能な環境にいる対象者
のうち実際に Web 調査で回答したのはどのような者かを確認する。