経済的地位と医療サービスの利用
DP番号
DP-2010-003
言語
日本語のみ
発行年月
March, 2011
著者
石井 加代子
JELコード
キーワード
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要旨
所得格差の拡大が指摘されるなか、医療にかんしても受診における不平等が懸念されて
いる。公的医療保険の主たる目的は所得による受診の格差を回避することにあるが、雇用
情勢が悪化するなか、保険料や医療費の自己負担は、低所得者にとって重い負担となりう
る。本論では、所得階層間における医療サービス利用の公平性について日本家計パネル調
査(JHPS)をつかって検討した。医療機関の受診の有無を被説明変数に分析した結果、同
じ健康状態であっても低所得者ほど医療機関の受診確率が低い傾向が確認された。一方で、
受診経験者に限定して、医療機関の窓口で支払った額を被説明変数に分析した結果では、
健康状態が同じであれば、医療サービスの利用量は所得によって差がないことが明らかと
なった。すなわち、ひとたび受診すれば、その後利用する医療サービスは所得に応じて制
限されることはないが、受診するか否かの段階では低所得ゆえに受診が抑制されている可
能性があることがわかった。