非正規雇用から正社員への転換は人材の組織定着を促したのか
DP番号
DP-2010-007
言語
日本語のみ
発行年月
March, 2011
著者
李 青雅
JELコード
キーワード
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要旨
本稿は非正規雇用から正社員への転換が人材の組織定着に与える影響を分析したもので
ある。正社員になると非正規の時に比べ、収入が増え、職場の訓練を受ける機会も増える
など雇用改善がみられる。雇用がより安定したものになったのは言うまでもない。労働者
がより良い仕事を得るために転職を考えるのであれば、これらの雇用改善は組織定着を促
す要因として考えられよう。本稿の分析ではこれを裏付ける結果が得られた。
しかし、非正規の就労経験を持たず一貫して正社員として働いてきた者に比べると話は違
ってくる。本稿ではパネルデータを用いたプロビット分析により、男性の場合、同じ正社
員でも過去に非正規の経験を持つ者はそうでない者に比べて収入が低く、したがって、定
着の意思が弱いことを明らかにした。収入の格差は女性にも存在する。しかし、定着の意
思に男性のようなキャリアによる差はみられていない。
正社員転換には転職を伴わない内部登用と転職を伴う外部採用がある。転職を伴わない内
部登用の者は当該企業の情報を豊富に持っているのでジョブ・マッチングの度合いも高く、
転職を考える可能性が低いはずである。本稿の推定ではまず内部登用者の場合、組織への
定着意思が強く、転職する確率は有意に低くなることが示された。しかし、彼らの組織定
着が良いのは必ずしも現在の仕事に満足しているからではないことも示されている。一方、
内部登用の者が転職をした場合、年収増にはつながらないが、仕事満足度は高まる。