女性の幸福度・満足度は出産行動に影響を与えるのか―「消費生活に関するパネル調査」を用いた第1 子・第2 子出産行動の分析―
DP番号
DP-2011-002
言語
日本語のみ
発行年月
November, 2011
著者
樋口 美雄・深堀 遼太郎
JELコード
キーワード
幸福度、生活満足度、夫婦関係満足度、出産、サバイバル分析
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要旨
本稿では、女性の「幸福度」、「生活満足度」、「夫婦関係満足度」という個々人の認識・意識
についての指標を出産行動の説明変数として陽表的に分析に用い、有配偶女性に限定して出産行
動にそれらが与える影響の有無を検証した。分析に先立ち、幸福度・満足度の指標を順序ロジッ
トで出産の従来の説明変数に回帰し、その結果から各サンプルについて予測された、上記指標の
カテゴリーの選択確率の分布の中で、実際に観察された指標カテゴリーより高い部分(観察値の
下振れ率)と低い部分(観察値の上振れ率)を算出した。その上で、これらと従来変数を用いて
サバイバル分析(離散時間ロジットモデル)で出産行動を分析した。
推計の結果、①妻の「生活満足度」の観察値の上振れが大きいと第 1 子出産が有意に促進さ
れ、②妻の「夫婦関係満足度」の観察値の下振れが大きいと第1子出産がやや有意に抑制される
ことがわかった。なお、③幸福度に関する変数は第 1 子出産に有意ではなく、第 2 子出産につ
いては、幸福度・満足度に関する変数はいずれも有意ではなかった。また、④第 1 子出産にお
いては、育児休業制度のない事業所での就業が無業に比べて出産を抑制し、パート・嘱託という
就業形態での就業は無業に比べてやや有意に出産を抑制する。⑤第 2 子出産においては、大卒・
大学院修了の女性が出産しやすい傾向にあった。加えて、⑥「幸福度」・「生活満足度」に関する
変数を説明変数に含む場合と含まない場合で比較すると、含む場合に、その他のごく一部の変数
の有意性について一定程度の向上が見られたが、政策的含意に影響はない程度といえる。