地震保険加入と震災後の家計消費の変化-消費保険仮説の再検証-
DP番号
DP-2011-007
言語
日本語のみ
発行年月
March, 2012
著者
馬 欣欣
JELコード
キーワード
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要旨
本稿では、東日本大震災前後の家計所得と家計消費の変動について、消費保険仮説を検証し、
また震災前の地震保険加入が家計消費の平滑化に与える影響を検討した。実証分析から得られ
た主な結論は、以下の通りである。第1に、全体的にみると、震災後の家計消費変動は平均消費
変動に依存すると同時に、家計所得変動の影響も受けており、消費保険仮説が棄却された。第 2
に、震災地域、非震災地域のいずれにおいても、震災後の家計消費が平滑化しておらず、消費保
険仮説が棄却された。第 3 に、震災前に地震保険に加入していたグループ、地震保険に加入して
いなかったグループのいずれにおいても、震災後の家計消費変動が家計所得変動の影響を受け
ており、家計消費が平滑化しておらず、消費保険仮説が棄却された。第 4 に、他の要因(平均消費
や家計消費嗜好など)が一定であれば、震災前に地震保険に加入していなかったグループに比
べ、地震保険に加入していたグループの場合、震災後の家計消費がより平滑化される傾向にある。
また、他の条件が一定であれば、地震保険加入が家計消費の平滑化を促進する効果は、震災地
域の方が非震災地域より大きい。分析結果により、震災前の地震保険加入は家計消費の平滑化
を促進する効果を持つことが示された。地震が多発する日本で、信用市場を通じて社会的リスクシ
ェアリングをするため、今後地震保険の加入を促進すべきであることが示唆された。