ディスカッションペーパー

母親の就業は子どもの肥満をもたらすのか

DP番号 DP-2011-011
言語 日本語のみ
発行年月 March, 2012
著者 李 青雅
JELコード
キーワード
ダウンロード PDF
要旨

日本の労働市場で働く母親が増えるにつれ、仕事と生活の調和、すなわち、ワーク・ライフ・バランスが重要課題として浮上している。本稿では、母親の労働供給によって子どもの健康は損なわれていないか、という問題意識のもと、母親の就業が子どもの肥満に与える影響を分析した。分析に用いたデータセットは 2011 年に行われた「慶應義塾家計パネル調査」の本調査とそのサブ調査である「お子様に関する特別調査」の 2 つのデータセットを接合したもので、親の経済変数と子どもの健康に関する情報が豊富にそろえられている。
分析により得られた知見は以下のとおりである。まず、母親の労働時間が長くなると、その子どもは肥満になる確率が高くなる。この傾向は男の子に顕著にあらわれ、日本男性の肥満の増加に母親の就業が影響している可能性を示唆している。具体的には、母親の週労働時間が 1 時間長くなると、男の子が太る確率は約 2.4%高くなる。男の子の肥満には母親の過去の就業状況も関係しているが、現在の労働時間ほど影響は大きくない。一方、子どもが大人になっていく過程で母親の就業がもたらす肥満は次第に解消されていく可能性も残されている。これについては更なる検証が必要であろう。女の子の場合、肥満と母親の就業は過去と現在のいずれにおいても有意な相関を持たない。