ディスカッションペーパー

東日本大震災が生活満足度と幸福感に与えた影響

DP番号 DP-2012-005
言語 日本語のみ
発行年月 March, 2013
著者 石野 卓也・大垣 昌夫・亀坂 安紀子・村井 俊哉
JELコード
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要旨

東日本大震災が発生してから 2 年が経過した。にもかかわらず復興は十分に進んでおらず、
震災は人々の心理面にも依然として大きな影響を与え続けている。本稿では、東日本大震
災発生前後の人々の主観的な幸福度や生活満足度の変化のありかたを分析する。従来の幸
福度の研究では、人々の主観的な幸福感や生活満足度は、同じような動きをするとみなさ
れ、両者が区別して分析されることは少なかった。ところが、東日本大震災発生の約 3 か
月後の時点で、生活満足度が下がったと回答した人は全国で 14.5%であるのに対し、幸福
感が下がったと回答した人は 4.5%であった。また生活満足度が不変であったり、下がった
りしていても、幸福感が上がったと回答した人たちが全サンプルの約 14%を占めており、
両者に異なる動きが観測された。分析の結果、東日本大震災に関連した寄付を行った人に
ついては、生活満足度が不変であっても幸福感が上昇している傾向があることが統計的に
有意に示された。また、東日本大震災前から生命保険に加入していた人については、生活
満足度が下落しているが幸福感が上昇している傾向が統計的に有意に認められた。これら
の結果のひとつの解釈として、主観的幸福感は生活満足度よりも利他性や他者との絆に関
連する面が強いものとして捉えられるのではないかと考えた。