ディスカッションペーパー

結婚が男性の労働供給に与える影響

DP番号 DP-2012-008
言語 日本語のみ
発行年月 March, 2013
著者 湯川 志保
JELコード
キーワード
ダウンロード PDF
要旨

本稿では、結婚が男性の労働供給行動に与える影響について、慶應義塾大学が実施してい
る「慶應義塾家計パネル調査」を用いて分析をおこなった。推定結果から、既婚男性の方
が独身男性よりも労働時間が長い傾向にあることが確認された。また、全体のサンプルで
は、個人の観察できない属性の効果をコントロールしたとしても、結婚は男性の労働時間
に対して正の効果を与えることが確認された。しかし、観測期間中に結婚変化のあったサ
ンプルに限定すると、結婚が男性の労働時間を増加させるという結果は得られなかった。
以上のことから、結婚後に男性の労働時間が増加するかについては、明確な結果を得るこ
とができなかった。さらに本稿では、結婚による労働時間の上昇が、Becker の家庭内分業
仮説と整合的であるかを確認するために、夫婦間の学歴差を比較優位の代理変数として分
析を行った。分析の結果、夫の学歴が妻の学歴よりも高い夫婦の方がその他の夫婦に比べ
て、結婚によって男性の労働時間が大きく増加し、女性の労働時間が減少することが確認
された。また、夫婦間の学歴差が、既婚男性の妻の労働時間や就業に与える影響について
は、夫の学歴が妻の学歴よりも高い夫婦の方がその他の夫婦に比べて、妻の労働時間は少
なく、就業しない傾向にあることが明らかになった。以上の推定結果は結婚が家計内の分
業を促進するという Becker の理論と整合的であるといえる。