ディスカッションペーパー

「社会人の学び直し」は成長産業への労働移動を促進させるか

DP番号 DP-2013-004
言語 日本語のみ
発行年月 November, 2013
著者 小林 徹
JELコード
キーワード
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要旨

本稿では日本における産業や職業移動の状況についてパネルデータを用いた確認を行う
とともに、職業訓練校や社会人大学院、専門学校への通学など自己啓発の実施によって、
今後の成長が見込まれる産業や職業への労働移動が促進されているかどうかについてもパ
ネルデータによる分析を行った。分析の結果見えてきたことは大きく以下の 2 つである。
第一には、日本においても産業、職業移動ともに外部労働市場が中心であり、内部労働
市場の移動率も産業で 10%弱、職業で約 15%程度はあるものの、産業移動については年々
減少傾向であった。また外部労働市場においても同分野内で移動する者が多いなか、一部
の産業や職業では異なる分野への移動も比較的確認され、流通業や定形手仕事職からサー
ビス業や非定形分析への移動が起こっている様子が見られた。しかし内部労働市場におけ
る移動者は定型手仕事職へ移る者も多く、拡大してゆく職業分野への移動とはなっていな
かった。
第二には、自己啓発の中でも通学や卒業が製造業からターゲット産業への移動や、非定
形相互から非定形分析への移動を促進させていた。また通学以外の自己啓発実施者は流通
業からその他産業へ、非定形手仕事から非定形分析業務への移動を多くしていた。ターゲ
ット産業への移動や非定型分析業務への移動を促進させるなど、自己啓発には今後伸び行
く分野への移動に一定の効果を持つと考えられる。なお、通学や卒業はターゲット産業へ
の移動に、通学以外の自己啓発は非定型分析への移動に持続的な効果を持つなど、それぞ
れの内容ごとに利点が異なっていた。