ディスカッションペーパー

生活時間を考慮した貧困分析

DP番号 DP-2014-002
言語 日本語のみ
発行年月 September, 2014
著者 石井 加代子・浦川 邦夫
JELコード
キーワード 所得貧困,時間貧困,家事の外部化,ワークライフバランス,ひとり親世帯
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要旨

人間が生活していくうえで,時間はお金と同様に有限な資源であり,一定の生活水準を保
つために最低限必要な量が存在するといえる。本稿では,通常の所得の貧困の計測に加え,
家庭生活において必要な時間(家事・育児時間など)が確保されているかどうかに着目し
た時間の貧困を計測した。貧困を2 次元で捉えることで,①どのような世帯で所得貧困・
時間貧困が発生しやすいのか,②所得貧困と時間貧困は関連しているのか,③家事サ
ービスの利用など(家事の外部化)により時間の貧困を所得で補うことで結果として所得
貧困に陥る世帯はどの程度いるのか,について明らかにした。
分析の結果,就業と子育てが時間貧困を引き起こす重要な要因であり,ひとり親世帯お
よび未就学児を抱える共働き世帯において時間貧困に陥る確率が高くなることがわかった。
特に,ひとり親世帯では時間貧困のみならず同時に所得貧困にも陥っている世帯が多く,
総じて子育て世帯においては時間貧困と所得貧困は必ずしもトレードオフの関係にはなっ
ていないことも明らかになった。また,家事の外部化にかかる費用を考慮して所得貧困
を計測した際に,所得貧困率が2.4%ポイント上昇することもわかった。これらの結果から,
未就学児を抱える共働き世帯や,特にひとり親世帯におけるワークライフバランス施策の
さらなる充実の必要性が浮かび上がった。