ディスカッションペーパー

学歴間の賃金格差は拡大しているのか

DP番号 DP-2015-002
言語 日本語のみ
発行年月 September, 2015
著者 何 芳・小林 徹
JELコード J31, E24, J21
キーワード 賃金格差、学歴、就業率
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要旨

本稿では学歴間賃金格差について、大卒-高卒間の違いに着目して、賃金、および雇用
形態、就業率の格差の存在とその変化の方向性について確認した。
一連の基礎集計の結果、大卒-高卒間の賃金格差は、マクロの平均値で見る限り、近年、
拡大傾向にあることが確認された。年齢階層別に見た場合、賃金格差の大きい高年齢層で
は格差はむしろ縮小傾向にあるが、中・若年層では、逆に格差は拡大していることが確認
された。高齢化による格差の大きい高年齢層の人数の拡大と、他の年齢階層内の学歴間賃
金格差の拡大によって、全体の学歴間平均賃金格差は拡大したと考えられる。
また大企業に就業している人の割合には、学歴間における格差の拡大傾向は見られなか
ったが、その一方で、正規就業率には、大卒と高卒間の違いは拡大傾向にあることが見ら
れた。学歴間賃金格差の拡大には、こうした学歴間における雇用形態の格差の拡大が強く
影響していることが確認された。
加えて賃金格差に留まらず、学歴間の就業率の違いを見ると、その差は拡大傾向にある。
但し、男女間でその傾向は異なる。女性では就業率は近年、高卒においても、また大卒に
おいても、ほぼ同程度に上昇している。ただし、高卒における就業率の上昇の多くは、パ
ート労働者としての上昇に負っている。一方、男性では、同じく大卒者の就業率は高いも
のの、時系列的には高卒も大卒も低下しており、特に高卒男性の非正規化、無業化の進展
は著しい。
学歴間の平均賃金格差は、就業率・雇用形態割合の違いをも含めて考えると、賃金水準
だけで確認した場合よりも、さらに大きいことが確認された。大学卒業のメリットは、個々
の雇用形態別に見たとき、大卒の賃金水準が高卒を上回っているというだけではなく、非
正規化、さらには無業化の割合が高卒よりも低く抑えられるといった面においても生じて
いる。とくに近年、その影響は、女性のみならず、男性において重要性を増していると言
える。