ディスカッションペーパー

地域労働市場における二極化の検証― ITの雇用代替効果と地方の雇用

DP番号 DP-2015-008
言語 日本語のみ
発行年月 March, 2016
著者 野原 快太
JELコード
キーワード 定型化仮説、IT、地域労働市場、二極化
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要旨

本稿では、IT の導入が地域労働市場に与える影響を Autor and Dorn(2013)の定型化仮説
の枠組みに基づき検証した。具体的には、「国勢調査」や「O*NET」などから作成した 1985
年から 2010 年の都道府県パネルデータを用いて、定型業務シェアが高かった地域ほど IT
の導入が進み定型業務シェアが減少する一方で、抽象業務・非定型亭仕事業務のシェアが
増加するという業務の二極化や、それに伴う所得分布の二極化が生じているかを検証した。
その結果、定型業務シェアが高かった地域で IT の導入が進むことや、その後の定型業務の
シェアが減少する一方で抽象業務のシェアが増加するという点については定型化仮説と整
合的な結果が得られた。ただし、非定型手仕事業務のシェアも減少していたことから、業
務の二極化は確認できなかった。また、所得についても、定型業務のシェアが高かった地
域で所得分布の中位・上位に対する下位の所得が小さくなるという関係は見られたが、所
得分布の二極化の動きは見られなかった。その他、定型業務のシェアが高かった地域で失
業率が上昇、就業者数が減少するという結果が一部では見られた。これらの結果を総合す
ると、地方創生の一環としての地方への IT 導入の推進は、地域内の職業構成という点で見
れば専門的・技術的職業に代表される高スキルの職業の割合を増加させることが期待でき
るが、その一方で所得下位層の格差拡大や失業率の上昇といった影響には注意が必要であ
るといえる。