ディスカッションペーパー

定年退職は健康にどのような影響を及ぼすのか

DP番号 DP2016-014
言語 日本語のみ
発行年月 March, 2017
著者 佐藤 一磨・山本 勲・小林 徹
JELコード I12, I18
キーワード 定年退職、メンタルヘルス、中高年者縦断調査
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要旨

 退職経験は健康にどのような影響を及ぼすのだろうか。この点に関して、欧米では数多くの研究が存在するものの、アジア地域のデータを用いた分析は少ない。しかし、アジア地域は急速に高齢化が進んでおり、社会保障制度の持続性が懸念されるため、退職が健康に及ぼす影響を検証することの意義は大きい。特に日本の場合、定年退職制度が存在するため、退職を外生変数として扱える利点もある。そこで、本稿では日本の最大規模の高齢者パネルデータである『中高年縦断調査』を用い、退職と健康の関係を分析した。分析の結果、次の3点が明らかになった。1点目は、さまざまな要因を考慮しても、定年退職経験はメンタルヘルスを改善させることがわかった。また、男女別の結果を見ると、男性においてメンタルヘルスの改善傾向が大きかった。この背景には仕事に多くの時間を費やす男性ほど、定年によって仕事上のストレス等から解放される度合いが大きいことが影響を及ぼしていると考えられる。2点目は、定年退職経験は日常生活の活動において支障を被る確率を低下させるが、その影響の持続性はなく、限定的であることがわかった。3点目は、定年退職経験は心臓病等の深刻な病気の発生に影響を及ぼしていないことがわかった。