生活時間の貧困分析―「21世紀縦断調査・成年者調査」による検証
DP番号
DP2016-015
言語
日本語のみ
発行年月
2017年3月
著者
石井 加代子・浦川 邦夫
JELコード
I32, J22
キーワード
所得貧困、時間貧困、家事の外部化、ワーク・ライフ・バランス、ひとり親世帯、「21世紀縦断調査・成年者調査」
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要旨
時間は生活水準を決定づける重要な要因の1つであり、生活を営むうえで、お金とともに重要かつ有限な資源である。本稿では,所得の貧困の計測に加え、家庭生活において必要な時間(家事・育児など)が確保されているかどうかに着目して時間の貧困を定義し貧困を2次元で捉えることで、①どのような世帯で所得貧困・時間貧困が発生しやすいのか、②所得貧困と時間貧困は関連しているのか(「貧乏暇なし」は本当なのか)、③家事サービスの利用といった家事の外部化により時間の貧困を所得で補う必要性から、結果として所得貧困に陥る世帯はどの程度いるのか、④勤め先におけるワーク・ライフ・バランス施策と時間貧困との関係はあるか、これらの点について「21世紀成年者縦断調査」の2010年から2012年の3年間のデータを用いて分析する。また、「日本家計パネル調査」を用いて同様の分析を行った石井・浦川(2014)と比較し、結果の整合性を確認することも本稿の目的である。分析の結果,石井・浦川(2014)と類似した結果を得ることができ、就業と子育てが時間貧困を引き起こす重要な要因であり,ひとり親世帯および未就学児を抱える共働き世帯において時間貧困に陥る確率が高いことがわかった。特に,ひとり親世帯では時間貧困のみならず同時に所得貧困にも陥っている世帯が多く,総じて子育て世帯においては時間貧困と所得貧困は必ずしもトレードオフの関係にはなっていないことも明らかになった。また,時間貧困という概念を加えて所得貧困を計測した際に,所得貧困率が2.6%ポイント上昇することもわかった。さらに、時間貧困を削減するため、職場のワーク・ライフ・バランス施策のより一層の充実が期待される。