ディスカッションペーパー

賃金と睡眠時間

DP番号 DP2019-001
言語 英語のみ
発行年月 October, 2019
著者 梶谷真也
JELコード I12; J24; J31
キーワード 労働生産性;睡眠時間;時間配分;賃金;労働時間
ダウンロード PDF
要旨

本論文では,慶應義塾大学が実施する『日本家計パネル調査:KHPSデータ』の2005年から2017年までの男性回答者の情報を用いて,賃金率が睡眠時間に与える逆の因果関係を考慮しながら,睡眠時間が賃金率に与える影響を分析する.具体的には,操作変数法を用いた固定効果モデルの推定を行うことで,時間不変な要因・時間可変な要因の双方によって発生する内生性を考慮する.回答者の居住地域の「月平均日照時間」と「年平均気温」を操作変数に用いて分析した結果,週平均睡眠時間が1時間増加すると賃金率は約4-6%上昇することが統計的に有意に確認された.正規労働者に限定した場合でも,約3-5%の賃金率の上昇が統計的に有意に確認された.これらの結果は,睡眠時間の増加が労働生産性を上昇させることを示している.また,内生性を考慮しない場合(固定効果モデル)では,係数値に負のバイアスが生じていることが分かった.このことは,賃金率の増加が睡眠時間を減少させるという逆の因果関係が存在していることを示唆している.