ディスカッションペーパー

相対所得と生活満足度:誰が自分の所得を誰の所得とどの程度比較するのか?

DP番号 DP2019-002
言語 英語のみ
発行年月 October, 2019
著者 白石憲一・隅田和人・上村一樹・岡本翔平・駒村康平
JELコード I31
キーワード 生活満足度;固定効果順序ロジット;距離の逆数;相対所得;準拠集団
ダウンロード PDF
要旨

第二次世界大戦終了後、一人当たり所得が増加しているにもかかわらず、西洋諸国と日本の平均的な幸福度や生活満足度は上がらないという逆説に対して、相対所得はこの逆説を説明する鍵と考えられている。この研究では、比較所得を相対所得の尺度として使用し、ミクロ計量経済分析を行うことで、生活満足度の観点から比較所得の係数の符号を検証している。この研究の貢献として、以下の3点を挙げることができる。第1は、固定効果順序ロジットモデルを用いて、生活満足度の方程式を推定することである。第2に、準拠集団の平均所得を推計するために、居住する地域間の距離の逆数を重みとして使用している点である。第3に、所得比較の方向と強さを同時に分析する点である。2011年から2017年までの20歳以上の日本人のサンプルを分析する。等価世帯所得を説明変数として使用した分析結果から、サンプル全体と低所得グル-プの比較所得の係数の符号は、ほぼすべてのケースで負である。したがって、効用の基数性を仮定せずに個人レベルの固定効果をコントロ-ルし、さらにいくつかの個人および地域の属性に基づいて準拠集団を定義しても、他人がより多くの収入を得ると、人々は相対的な剥奪の感情を持つことを実証的に明らかにした。