高賃金の抽象タスクへの従事機会の不均等と男女間賃金格差
DP番号
DP2019-005
言語
日本語のみ
発行年月
March, 2020
著者
小林徹、野崎華世
JELコード
J30, J31, J39
キーワード
男女間賃金格差;タスク偏向的技術進歩
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要旨
近年、IT技術などの技術進歩により、労働者に求められるタスクが、定型的な業務処理から、状況に応じて解決策を考える必要があるような非定形的な業務へとシフトしているというTBTC仮説の研究が進められている。本稿では、一般知能を測る一指標と考えられる「推論テスト」の得点が、賃金の高い抽象タスクに就くうえで有利に働いているか、さらには賃金の引上げに効果を持っているかを検証し、とくに男女間でそれに違いがあるかを分析する。仮に男女とも、「推論テスト得点」が高いほど、高賃金の抽象タスクに従事することを容易にしているとしても、女性ではその効果が小さいとすれば、潜在的能力は同じであったとしても女性は「推論テスト」の得点を高めようとする投資意欲が抑制され、その結果、男女間賃金格差が生み出される可能性がある。分析の結果、一般に学歴とともに「推論テスト」が高いほど抽象タスクに従事しやすいことが確認されたが、その効果には男女間で差があり、学歴、および「推論テスト」の得点の効果は女性において小さいことが検証された。このようなタスク従事の決定構造の男女間の違いが存在することにより男女間賃金格差の4%程度が説明されることがわかった。