ディスカッションペーパー

【第1回学生論文コンテストJHPS AWARD受賞論文:優秀賞】
ライフステージで捉える共働き夫婦の課題 ―結婚期間による家事・育児負担の変化―

DP番号 DP2019-009
言語 日本語のみ
発行年月 March, 2020
著者 松坂空香
JELコード J12
キーワード 共働き夫婦、家事・育児分担、ライフステージ
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要旨

 本稿では、家庭におけるライフステージが共働き夫婦の家事・育児時間と夫の家事・育児比率に与える影響を実証した。本稿の分析では、末子の就学状況と結婚期間をライフステージの代理変数として用いることで、子どもの成長に関するライフステージの影響と、夫婦関係等の、時間の経過によって変化する意識・経験に関するライフステージの影響を区別した観測を行う。本稿の様に、この2つのライフステージの影響を精確に分析した先行研究は少なく、新たな家事・育児分担の課題を明らかにできる。更に、結婚期間についてはダミー変数化し、時間の経過により家事・育児時間、夫の家事・育児分担比率が如何に変化するのかを確認した。
 本稿の分析結果では、妻は子どもに関するライフステージの影響を大きく受けるが、その代わりに意識・経験に関するライフステージの影響を受けにくいことが明らかになった。一方、夫の家事・育児時間に関しては妻と反対の結果が示された。また、結婚期間10年目ダミーを基準としたとき、夫の家事・育児比率は結婚期間前半に増加するが結婚期間後半では約10%減少してしまうことが明らかになった。更に、世代別のコーホート分析を行った結果、男女の平等化が進んでいると考えられる若年層においても同じ現象が起きており、全世代で共通した特徴であることが明らかとなった。これは、共働き家庭の家事・育児分担における新たな課題の発見であり、本稿の貢献と言える。