ディスカッションペーパー

自治体アンケートの回答を決める要因は何なのか ‐特定健診及びがん検診に関するアンケートの結果から‐

DP番号 DP2020-001
言語 日本語のみ
発行年月 May, 2020
著者 上村一樹、駒村康平
JELコード H75; I12; I18
キーワード 特定健診;がん検診;健康増進;地方自治体
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要旨

特定健康診査(以下、特定健診)の開始、および、がん検診無料クーポンの配布開始から、10年以上が経過した。どちらの受診率も上昇傾向にはあるが、特定健診は目標の70%に、がん検診は諸外国の水準に、それぞれ届かない状態が続いている。
各自治体は工夫を凝らして受診勧奨を行っているものの、各自治体の受診勧奨政策について、全国レベルのデータベースは未だ存在して おらず、その効果について分析することが困難な状況である。そこで、今回、全国の全基礎自治体に対して、『特定健診等に関するアンケート調査(以下、特定健診アンケート)』『がん検診・健康づくり等に関するアンケート調査(以下、がん検診アンケート)』の二種類の郵送調査を実施した。
本稿では、特定健診アンケート、がん検診アンケート、それぞれを(1)どのような自治体が回答したか(2)早期回答した自治体にはどのような特徴があるのか、の2点を分析した。その結果、以下の5点が明らかになった。
第一に、人口が多い自治体ほど、返送率が高く、返送も早い。第二に、人口当たりの公務員数が多いと、返送の早さは変わらないものの、返送率が低下する。第三に、財政力指数が高いと、アンケート返送率は変わらないが、返送が早くなる。第四に、人口一人当たり病院・診療所数が多いと、特定健診アンケートの返送率のみ高くなり、返送も早くなる傾向がある。第五に、後期高齢者一人当たり医療費が高いと、アンケート返送率は低下するが、特定健診アンケートについては、返送が早くなる傾向もある。
これらの結果から、独自の自治体アンケートを行う場合には、自治体からの回答はランダムに発生するわけではない、という点に留意すべきである。