ディスカッションペーパー

【第2回学生論文コンテストJHPS AWARD受賞論文:最優秀賞】
日本における退職消費パズルの検証

DP番号 DP2020-007
言語 日本語のみ
発行年月 March, 2021
著者 丹後健人
JELコード D12; E21
キーワード 退職消費パズル、ライフサイクル/恒常所得仮説、時間選好率
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要旨

本論文では、退職後に消費水準が低下するといういわゆる「退職消費パズル」について、「日本家計パネル調査(JHPS/KHPS)」を用いて検証した。本論文の発見は以下の三点である。第一に、退職後に消費が減少していた。退職後の「家庭内生産(home production)」や仕事関連消費(work-related consumption)を除いた場合でも、退職後は消費が約10%減少していた。第二に、退職後の消費は少なくとも3年にわたって減少していた。退職後の消費が減少し続けているのかについては、これまで先行研究が必ずしも明らかにしてこなかった点であるが、本論文では時系列方向に長いJHPS/KHPSの特性を活かし、退職後の消費が「L字型」に減少し続けていることを実証した。第三に、退職後の消費低下が、時間選好率で説明可能であった。時間選好率の高低で家計を分割して推計を行ったところ、時間選好率の高い家計だけが退職後に消費を減少させていたことが明らかとなった。