ディスカッションペーパー

【第2回学生論文コンテストJHPS AWARD受賞論文:審査員賞】
家族との関わり方と子どもの問題行動―JCPSを用いたパネルデータ分析―

DP番号 DP2020-009
言語 日本語のみ
発行年月 March, 2021
著者 福岡まり子
JELコード J13
キーワード 子どもの問題行動、家族との関わり方、家族関係、家族療法
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要旨

本稿では、子どもの問題行動を解決するために、家族の関係性や家族との交流時間といった「家族との関わり方」に着目し、家族・きょうだいとの関わりが子どもの問題行動にどのような影響を与えているのかを明らかにすることを目的とした。本稿の分析では、帰宅後の過ごし方を家族との関わり方の代理変数とし、きょうだいと共用の部屋の有無についてのダミー変数をきょうだいとの関わり方の代理変数として使用することで、家族との関わり方と子どもの「行為問題」「仲間関係のもてなさ」といった問題行動の関係性を明らかにする。また、パネルデータ分析を用いることでより多くの固定効果を考慮したうえで本当に家族との関わりが子どもの問題行動に影響をするのか検証した。
その結果、家族・きょうだいとの関わりは「行為問題」に影響するとはいえなかったが、家族・きょうだいとの関わりが多いと「仲間関係のもてなさ」は減少することが明らかになった。従って、家族・きょうだいとの関わりは子どもが良好な仲間関係を築くことに対して重要な役割を担っているといえる。さらに、母親のメンタルヘルスは、多くの先行研究で子どもの精神的健康や問題行動に影響を与えていたが、固定効果を考慮すると有意性が確認されなかったことも大きな発見である。以上のことから、子どもの問題行動の解決策として、家族との関わりを増加させることに着目することの必要性を裏付けることができたのではないかと考える。