ディスカッションペーパー

【第2回学生論文コンテストJHPS AWARD受賞論文:審査員賞】
中学受験の規定要因と親子の生活の質(QOL)に与える影響についての実証分析

DP番号 DP2020-010
言語 日本語のみ
発行年月 March, 2021
著者 王山寧洋、西川丈二朗、藤本大統、向島千尋
JELコード C23; D10; I21
キーワード 中学受験、規定要因、影響分析、QOL、少子化
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要旨

近年、少子化にも関わらず中学受験者数は増加傾向にある。先行研究では、中学受験の規定要因として年収や学歴などの親の要因が明らかにされてきたが、制度的・社会経済的な変化の要因や性別・性格等の子ども自身の要因については未だ不明瞭な点が多い。これらの課題を検討するため本稿ではマクロとミクロの両視点から規定要因分析を行う。都道府県単位のマクロ的視点による分析からは、景気の良し悪しや不安定さが中学受験決定に影響を及ぼすことがわかった。家計単位のミクロ的視点による分析からは、母親が専業主婦であるといった親の要因に加え、子どもに対する親の裁量権が大きいと中学受験を選択しやすくなることがわかった。さらに本稿では中学受験の影響分析も行う。一般的に、親は国私立中学校の高い教育達成や充実した生活面に期待を寄せ、子どもに中学受験をさせる。従来の研究では、中学受験を経て独自のカリキュラムによる中高一貫教育を受けることで、学力向上に繋がることを示してきた。しかし生活面に与える影響についての実証研究は未だ少なく、親の期待に応えるような効果が本当にもたらされるのかどうかは明らかにされていない。そこで本稿では、生活の質(QOL)を指標とすることで、その効果を実証分析する。分析の結果、中学受験をした子どもはそうでない子どもに比べてQOLが高くなる傾向にあることが明らかになった。また、子どもの中学受験が両親のQOLに与える影響についても分析を行なった結果、父親には統計的に有意な影響は見られなかったものの母親のQOLを高めることがわかった。