ディスカッションペーパー

夫婦関係満足度と幸福度―夫婦仲が悪い結婚と離婚、幸福度をより下げるのはどちらなのか―

DP番号 DP2021-001
言語 日本語のみ
発行年月 April, 2021
著者 佐藤一磨
JELコード J12
キーワード 結婚; 幸福度
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要旨

欧米の先行研究は、未婚者と比較して既婚者ほど主観的厚生が高いことを明らかにしている。しかし、結婚の影響は、夫婦関係の良し悪しによって変化すると考えられる。ここで疑問となるのは、たとえ夫婦関係が悪い結婚でも、主観的厚生を高めているのかといった点だ。また、仮に夫婦関係の悪い結婚が主観的厚生を低下させていた場合、その大きさは離婚の影響よりも大きいのだろうか、それとも小さいのだろうか。本論文では『消費生活に関するパネル調査』を用い、これらの疑問を検証した。被説明変数に5段階の幸福度を用い、女性を対象とした分析の結果、次の4点が明らかになった。1点目は、欧米の先行研究と同じく、未婚女性と比較して既婚女性ほど幸福度が高くなっていた。2点目は、未婚者と比較して、夫婦関係に満足する既婚女性ほど幸福度が高く、夫婦関係に不満がある既婚女性ほど幸福度が低くなっていた。この結果から、すべての結婚が女性の幸福度を高めているわけではなく、夫婦関係に満足している場合にのみ結婚によるプラスの影響が観察されると言える。3点目は、離婚によって女性の幸福度は低下するが、その低下幅は夫婦関係に不満がある場合よりも小さかった。この結果から、夫婦関係に不満がある女性の幸福度は、未婚者や離婚者よりも低くなっていると考えられる。4点目は、女性の年齢別に分析した結果、20代、30代、40代と年齢が上がるにつれて、夫婦関係の良し悪しによる影響が緩やかに減少することがわかった。学歴別の分析もおこなったが、学歴間による明確な違いは確認されなかった。