ディスカッションペーパー

【第3回学生論文コンテストJHPS AWARD受賞論文:審査員賞】
労働や家事・育児が睡眠時間に与える影響についての実証分析

DP番号 DP2021-014
言語 日本語のみ
発行年月 March, 2022
著者 伊藤由理花、大堀敦士、笠原樹、兼本優、松本萌香
JELコード DP2021-014
キーワード 睡眠時間; 労働時間; 家事; 育児; 働き方改革; 女性活躍推進
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要旨

本稿では、労働時間が睡眠時間に与える影響について、「日本家計パネル調査(JHPS/KHPS) 」を用いて検証した。先行研究では、睡眠が労働において重要な影響を与えており、生産性や職業生活の充実、健康状態などと多岐にわたる影響をもたらすことや、育児や家事時間が睡眠時間に影響を与えること、普段の日常生活や外生的な要因は睡眠時間の長さや質に影響を与えうることなどがわかっているが、労働時間が睡眠時間に影響を与える要因になっているのかということは必ずしも明らかになっていない。そこで、本稿では、働き方改革という外生的な労働時間の変化を自然実験と捉え、睡眠時間が労働時間に影響を与えるという逆の因果性を考慮しながら、長時間労働が睡眠時間の減少要因となっているのか、また、その傾向が育児・家事負担の多い女性ほど顕著であるのかを分析した。分析の結果、働き方改革による労働時間の変化の影響を強く受けたと想定される従業員規模500人以上の大企業・官公庁の正規雇用者において、労働時間が増えると睡眠時間が減少する傾向が示された。また、その傾向は男性よりも女性で顕著であり、女性活躍推進を背景に女性が長時間労働するようになっても、家事や育児の負担が多いために、睡眠時間の減少という形で女性にしわよせが生じる可能性があることが示唆された。