出生順位の影響はこれまで多くの経済学者が興味を持ち、分析を行ってきた。先進国では分析が進んでおり、出生順位が高いほど、学歴や所得が低下する傾向にあることがわかっている。近年では健康、IQ、そして世代間にわたる影響といったさまざまな面に対する出生順位の効果が明らかにされている。しかし、出生順位が家族の他のメンバー、特に配偶者に及ぼす影響については研究がまだない。本研究ではJapanese General Social Surveys (JGSS)を用い、夫の出生順位が妻の主観的厚生に及ぼす影響を検証した。分析の結果、次の4点が明らかになった。1点目は、夫が長男の場合、妻の幸福度が低下していた。また、夫婦関係、余暇、家族生活に関する満足度も夫が長男である場合ほど低下する傾向にあった。2点目は、夫が一人っ子長男であったり、出生コーホートが近年であるほど、妻の満足度指標が低下する場合があった。3点目は、長男の夫ほど、年老いた両親を支援する義務があると考えており、実際に家事を支援する傾向があった。4点目は、長男の夫と結婚した女性ほど就業や子育ての選好にバイアスがあるかどうかを検証したが、そのような傾向は確認できなかった。