ディスカッションペーパー

【第4回学生論文コンテストJHPS AWARD受賞論文:優秀賞】
働き方改革が消費行動に与える影響についての実証分析

DP番号 DP2022-010
言語 日本語のみ
発行年月 March, 2023
著者 伊藤万輝、小野隆太郎、金山太一、野々村百華
JELコード J80; J88
キーワード 働き方改革; 消費行動; 自己研鑽; DD分析; 傾向スコア加重最小二乗法
ダウンロード PDF
要旨

本稿では、2019年より日本政府の推し進める「働き方改革」が与えた消費行動への影響について、日本家計パネル調査(JHPS) を用いて、実証分析を行った。先行研究では、所得と消費の密接な関係や余暇時間の使い方が変化している可能性があることと、自己研さんをすることで正規雇用者、非正規雇用者共に生産性が上がることが分かっている。しかし、働き方改革が個人の消費に与えた直接的な影響を検証した研究は存在しないため、本稿は働き方改革の消費への影響を分析した。働き方改革が消費に与えた効果を分析するため、分析手法としてDD分析を用い、コントロールグループとして所定内時間で働く人、トリートメントグループとして長時間労働者でかつ残業代が出る人、長時間労働者で残業代が出ない人、短時間労働者を取り、固定効果モデル傾向スコア加重最小二乗法で分析を行った。被説明変数として労働時間、所得、消費全体、各主要消費項目をとり、所得効果、機会効果の視点から働き方改革の消費行動に与えた影響を分析した。また、各個人属性を考慮し、働き方改革による中長期的な影響を時間を使う消費から捉え、教養娯楽消費や自己研さん時間に着目した分析を行った。分析の結果、残業代が出ない長時間雇用者、短時間雇用者について、労働時間が減少しているが、所得は変化していおらず、また、消費支出の変化も起きていないことがわかった。また、消費を費目別に分析すると、労働時間に変化のあったグループで、いくつか消費項目で有意な変化が見られたが、機会効果により時間を使う消費の増加は見られなかった。また、労働時間に変化のあったグループで、短時間雇用者を中心として自己研さん時間が増加傾向にあったことがわかり、短時間雇用者を中心として、働き方改革が中長期的に労働者や社会全体の生産性上昇につながる可能性があることも分かった。