ディスカッションペーパー

【第4回学生論文コンテストJHPS AWARD受賞論文:審査員賞】
健診(検診)の受診に関する実証分析

DP番号 DP2022-011
言語 日本語のみ
発行年月 March, 2023
著者 兼本優
JELコード I12
キーワード 健診(検診); 医療機関; 労働時間; 家事・育児時間; 性格特性; 生活習慣; 固定効果モデル; 変量効果モデル
ダウンロード PDF
要旨

医療費の高騰や健康寿命の延伸、生活習慣病患者の増加などを背景に、近年予防医学が注目されている。中でも、健診(検診)受診の促進に向けた施策は国や各自治体によって活発に行われている。しかし、現状として日本の健診(検診)受診率は未だ低い。加えて健診(検診)において問題点を指摘されたにもかかわらず、医療機関を受診していない人の割合も高くなっている。この点から、健診(検診)の受診やその後の医療機関の受診を促進/阻害する要因に関する先行研究は数多く蓄積されてきた。しかし、性別や学歴、収入といった基本属性や性格、生活習慣などが受診に影響を与えることは明らかになっているが、アンケート調査によって明らかにされた「多忙である」ことの具体的な要因は明らかにされていない。また長期間のパネルデータを用いて分析した研究や定量的な分析をしている研究も数少ない。したがって、健診(検診)の受診および健診受診後における受療行動の要因を定量的に分析することは重要であるといえる。そこで、本稿では、受診要因に関して、労働時間および家事育児時間、性格特性、普段の生活習慣に着目して、日本家計パネル調査(JHPS/KHPS)を用いて分析を行った。まず、健診(検診)の受診要因を分析したところ、女性特有の子宮がん検診と乳がん検診においては、短時間労働者ほど受診する傾向にあること、定期健康診断においては育児時間が長い女性ほど受診しない傾向にあることが明らかになったが、労働時間や家事・育児時間が健診(検診)の有無に与える影響は健診(検診)の種類や性別によって異なる結果となった。加えて、リスク回避的や真面目、心配性な人ほど受診する傾向にあり、この傾向は医療機関の受診の有無においても同様の結果となった。次に、健診受診後における医療機関受診の要因を分析したところ、家事時間が長いほど受診しない傾向にある一方で、育児時間が長いほど受診するという逆の結果が得られた。なお、日頃から運動している女性ほど医療機関を受診しないこと、喫煙や飲酒をしている人ほど受診する傾向にあることがわかった。