ディスカッションペーパー

【日英共同研究による実証研究シリーズ】
コロナ禍における所得格差とウェルビーイング格差の動向(2024年11月30日改訂)

DP番号 DP2023-003
言語 英語のみ
発行年月 March, 2024(November, 2024改訂)
著者 石井加代子、山本勲
JELコード D31; I31; I14
キーワード 格差; ウェルビーイング; COVID-19
ダウンロード PDF
要旨

日本家計パネル調査のパネルデータを用いて、新型コロナウイルス感染症が所得格差とウェルビーイング格差に与えた中期的影響を検証した。所得格差の分析では、パンデミック前後のジニ係数と所得の動態に着目した。ウェルビーイング格差の分析においては、メンタルヘルスや生活満足度などの様々な主観的ウェルビーイング尺度に着目した。その結果、中期的に所得格差は拡大していないことが明らかになった。コロナ禍においても低所得層で所得が伸びており、それがコロナ禍における所得格差拡大を抑制した。逆に、全体的にウェルビーイングは悪化し、ウェルビーイングの不平等は拡大した。さらに、所得とウェルビーイングの格差との間に関連があることもわかった。ランダム効果モデルおよび固定効果モデルから、パンデミック発生後、高所得者層のウェルビーイングが改善した傾向にあるのに対し、低所得者層のウェルビーイングは悪化傾向にあることが示された。さらに、因果媒介分析によると、在宅勤務の導入が高所得層の人々のウェルビーイング上昇の要因となっていることがわかった。コロナ禍で、高所得層の人々の間で在宅勤務が普及し、かれらが在宅勤務の様々な利点を経験したことが、かれらのウェルビーイングの向上と全体としてのウェルビーイングの不平等の増加に寄与した。