【第5回学生論文コンテストJHPS AWARD受賞論文:特賞】
無期転換ルールの政策評価――当該制度が労働者の仕事・生活の質と雇止め発生確率に与える影響の実証分析――
DP番号
DP2023-005
言語
日本語のみ
発行年月
March, 2024
著者
與那覇優棋・清原麻央・杉田崇哉・松永直之
JELコード
J41; J63
キーワード
無期転換; 正規雇用転換; 有期契約労働者; 雇止め; 基幹化; 怠業仮説; モラルハザード; 多項ロジットモデル; ダイナミックDID(イベントスタディ)分析; DID分析
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要旨
労働契約法の改正により制定された無期転換ルールは、有期労働者を雇止めから保護することを目的としている。本研究では無期転換ルールの政策評価を行うため、日本家計パネル調査を用いて、無期転換の選択メカニズム、無期転換後の仕事・生活の質および雇止めの発生確率の変化ついて、多項ロジットモデル、ダイナミックDID分析、DID分析を用いて実証分析を行った。分析の結果、大学卒の者は無期転換を選択しやすい一方で、大学院卒、医療・福祉業、教育・学習支援業従事者は、無期転換を選択しにくいことが明らかになった。次に、他の労働条件を一定とした場合、有期から無期への転換は年収、労働時間、仕事満足度、メンタルヘルスに有意な影響を与えないことも判明した。さらに無期転換ルール施行後、女性有期労働者の勤続年数は有意に減少した一方で、男性有期労働者の転職・失職確率は有意な変化が見られなかった。以上より、無期転換ルールの施行によって有期労働者の待遇が是正されたという証拠を見出せず、むしろ雇止めが増加した可能性があることを考慮すると、有期から無期への転換ではなく、非正規から正規への転換を促進させるなどの見直しが必要である。