夫よりも学歴が高い妻は幸せなのか
夫よりも学歴が高い妻は幸せなのか。この疑問は、これまで夫よりも学歴が低い妻(学歴上方婚の妻)が多かった我が国において、女性の大学進学率の上昇によって夫よりも学歴が高い妻(学歴下方婚の妻)が持続的に増加している今、非常に興味深い問となる。本稿ではこの点を中心に夫婦の学歴組み合わせと妻の主観的厚生の関係について分析した。この結果、次の4点が明らかになった。1点目は、学歴下方婚の世帯における経済的な特徴を見ると、妻の勤労所得は高くなるものの、夫の勤労所得が学歴グループの中でも最も低いため、世帯所得も低くなることがわかった。また、夫婦の家事・育児時間を見ると、学歴下方婚の妻は他の学歴グループとほぼ同程度の家事・育児を担っていた。このように我が国の学歴下方婚の場合、結婚の分業のメリットを十分に生かしておらず、世帯所得は低く、妻の家事・育児負担も大きい。2点目は、学歴下方婚の妻ほど幸福度、生活満足度、夫婦関係満足度といった主観的厚生が低いことがわかった。3点目は、上方婚、同類婚、下方婚のいずれの場合でも、夫婦ともに高学歴であるほど主観的厚生が向上し、夫婦ともに低学歴であるほど妻の主観的厚生が低下することがわかった。ただし、下方婚の場合ほど夫婦ともに低学歴である際の負の効果が強く、上方婚の場合ほど夫婦ともに高学歴である際の正の効果が強くなる傾向があった。4点目は、夫婦ともに学歴が低い場合、特に夫婦のいずれか、もしくは両方が中卒であった場合、結婚していても独身女性と幸福度に差が見られないことがわかった。この結果は、結婚していても個人属性によっては独身の場合より主観的厚生が必ずしも高くならないことを意味する。以上の分析結果から、我が国では夫よりも学歴が高い妻は、相対的に幸せになれていないと言える。この背景には、性別役割分業意識が色濃く残る我が国の現状があり、結婚による分業のメリットを下方婚の妻が十分に享受できてない状況がある。